2015-03-05

壱岐友輔に託されたカンボジアの夢

Photo Masayori Ishikawa

 プノンペンから40km離れた小さな町、トンレバティ。昨年2月、14年間過ごしたベガルタ仙台からカンボジア育成年代のディレクター(総監督)に就任した壱岐友輔は、この小さな町に作られたカンボジアナショナルフットボールセンターでカンボジア全土から選抜した育成年代の指導にあたっている。

 壱岐が指導にあたるのは、2023年にカンボジアで開催される予定のシーゲームで、金メダルを目指す代表チームだ。これはカンボジア王国が、国をあげて力を入れるプロジェクトのひとつで、その夢のひとつのスタートを日本人である壱岐にたくしたのだ。

 日本サッカー協会(JFA)のアジア貢献事業の一環で、JICAのサポートを得る形でカンボジアに派遣された壱岐。家族を日本に残し、単身カンボジアへ渡った。

昨年10月にアセアンフットボールリンクに掲載されたインタビュー記事も見てほしい。

この記事からも、そして実際お会いしても、壱岐はカンボジアでの苦労を何か楽しんでいるように思える。性格的にも合っているいるというが、そこには大好きなフットボールを通じて成長する、カンボジアの子供たちの姿がしっかりと感じることができているからなのかもしれない。

 そんな壱岐は常々 「とにかくカンボジアは外にでて経験を積まなければいけない。」 と言う。

 昨年11月、国際交流基金、JFA、そしてJリーグの三者が、今後のアジアにおけるサッカー交流ならびに、協働事業に関する覚書を締結したと発表した。この発表がされる直前、壱岐が率いるカンボジア代表は大阪でキャンプを行っていた。このキャンプこそ、国際交流事業アジアセンターの支援によって実現したものだった。この日本合宿でも、壱岐はまたひとつ大きな手応えを掴んでいるようだった。

 そして昨年末、現役時代ガンバ大阪で活躍し、その後タイリーグでもプレーした木場氏がアンバサダーを務めたU14アセアンドリームフットボールトーナメントに参加し、タイの強豪クラブやJのクラブとも試合を行う機会を得た。結果は1勝6敗ではあったが、同大会で国際大会初勝利を勝ち取ったのだ。その相手は、モンテディオ山形だった。

 壱岐は大会後、自身のブログにこう綴った。

最初の頃は勝敗どころの問題にもならない点差で負け続け、当然このような状況が続くと試合をする前にメンタル面で弱気になり、試合どころではなくなる。試合が始まれば、技術、戦術的に未熟の為、守備一辺倒で、攻撃すらままならない国際経験からのスタートでした。

それが、この1年間で、日本遠征2回、国内ではリーグ戦、カップ戦を戦い、普段の練習も一生懸命取り組んだ結果、今大会で彼らは、どのような相手だろうと勇敢に立ち向かい、どの対戦相手にもボールを持つ時間をつくれる様になりました。


 壱岐が任された代表は、2023年のシーゲームで頂点を目指すチームだが、当面の目標は今年9月に開催されるAFC U16選手権予選突破。そしてその大会直前には、AFF(アセアン)U16選手権(インドネシア)もある。もちろん、どの大会も勝てる保証などどこにもない。しかしこの1年、壱岐が大切に撒いた種は確実に育っている。

 この秋、勝っても負けてもカンボジアはアジアを驚かすかもしれない。いや、驚かしてほしい。そんな壱岐カンボジアに、是非フットボールファンは注目してほしい。

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